牛たちの様子が、おかしい。種をつけても妊娠しない。産まれても、乳が出ない。仲間の牧場が、ひとつ、またひとつと消えていく。
酪農家・正光は、ある研究者の論文にたどり着く。牛のからだを、根本から整える——かかる費用は、牧場の年間売上に等しい額だった。
「無謀だ」「騙されている」。仲間は口を揃える。それでも正光は、一歩を踏み出す。妻・静子だけが、その背中を信じてついていった。
音楽を聴かせ、土に炭を埋め、できることのすべてを。ひと月、半年、一年——それでも、数字は変わらない。
崩れていく暮らし。離れていく仲間。託された想い。
奇跡は、本当に、起きるのか。













